『もう一つの聖櫃伝』あとがき |
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丸谷いはほ |
「歌は預言」と師の山内光雲(故人)は言いました。 また預言は必ず韻律を伴って顕れるとも言うのです。 詩人の谷川俊太郎氏が平成14年10月に来阪したとき、作家志望の大阪文学学校仲間と共に、学校近くの「すかんぽ」という居酒屋で飲んだ事がありました。 「どのような時に詩が生まれるのですか?」と聞きました。 丁寧にサインをしてくださった後、谷川氏は作詩について、 「原稿用紙を前にして、出てくるまで何時間でも待つのですよ」と話されました。 「待てば必ず出てきます」とも言われたのが印象に残っています。私の場合の小説は、自分が見た夢が原風景で、そこから作文し、物語を膨らませて行きます。 霊的なものがその発露を求めて具現化したのが作品だと思うからです。 「夢」は、もちろん自分の霊性が脳を介して映像として見せたものでしょう。 「すかんぽ」は、詩人の作井満氏と時々飲みに行ったことがある酒場です。作井氏は大阪文学学校で講師をしていたこともある方で、「海風社」という出版社を興した詩人でもあります。創業以来「南島叢書」と題した文芸書を刊行し続け(現在85巻)、他にも多くの出版物を世に送り出しましたが、残念ながら平成15年に作井満氏は死去。遺業は夫人の作井文子氏が継承しています。 今回の私の小著も、前著『もう一つの空海伝』に引き続いて「海風社」のお世話になりました。前回同様、現社長作井文子氏の貴重な助言とご協力で出版の運びとなりました。ここに記して感謝いたします。 平成29年9月3日 丸谷いはほ ●著者プロフィール |